レーザースキャナーの基本原理や仕組みを紹介|価格相場や活用事例も理解しておこう

「レーザースキャナーの基本原理や仕組みは?」「レーザースキャナーの価格相場は?」と疑問に思ったことはありませんか?

レーザースキャナーとは、レーザー光を照射して対象物までの距離や形状を測定する計測装置です。建築や土木、製造などの幅広い分野で活用されていますが、用途や種類によって価格も変化します。

本記事では、レーザースキャナーの基本原理や仕組み、価格相場を紹介します。活用事例や選び方、導入までの流れもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

目次

レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)とは?

レーザースキャナーは、レーザー光を用いて物体の距離や形状を計測する先進的な装置です。

レーザー光を対象物に向けて発射後、反射光を検出器で捉えることで、対象物の三次元的な位置や形状を正確に把握できます。

レーザースキャナーの技術は建築や土木、製造業など多岐にわたる分野で利用されています。

レーザースキャナーの基本原理

レーザースキャナーの基本原理は、レーザー光を物体に向けて発射して、反射光の特性を分析することです。

レーザー光が物体にあたり、反射する際の時間差や光の位相変化を計測することで、対象物の距離や形状を高精度で捉えられます。

また、非接触で対象物の詳細なデータを収集できるため、遠方や届きにくい場所の物体を計測する際に用いられます。

レーザースキャナーの仕組み

レーザースキャナーの仕組みは、主に以下の2つです。

  • タイム・オブ・フライト方式
  • フェイズシフト方式

タイム・オブ・フライト方式ではレーザー光が対象物に到達後、戻るまでの時間で距離を算出します。

一方、フェイズシフト方式は発射されたレーザー光と、反射して戻ってきた光の位相差をもとに、距離を計算する方式です。

どちらの方法も精密な測定が可能なので、使用環境や条件で判断しましょう。

レーザースキャナーのタイプ

レーザースキャナーは使用環境や目的に応じて、以下4つのタイプに分類されます。

タイプ特徴
地上型3Dレーザー(TLS)・広範囲をスキャンするために使用される
・建築物や地形の測定に適している
UAVレーザー(ULS)・無人航空機(ドローン)に搭載されている
・空中から地形や建築物をスキャンする
航空レーザー(ALS)・航空機に搭載されている
・広範囲の地形や森林などを高い解像度でスキャンする
車載型レーザー/モービルマッピングシステム(MMS)・車両に搭載されている
・車で移動しながら周囲の環境をスキャンする

タイプ別で特徴をもっており、特定の用途や環境に使用されています。活用する目的は状況ごとに異なるため、自社の活動に最適なスキャナーを選びましょう。

レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)を導入するメリット

レーザースキャナーは多岐にわたる分野で利用されており、導入には以下のメリットがあります。

  • 非接触で対象物の形状や寸法を計測してくれる
  • 広いエリアも迅速かつ精度高く計測する能力がある
  • 建築・土木・製造など幅広い分野で使用できる

各メリットについて詳しく解説します。

非接触で対象物の形状や寸法を計測してくれる

レーザースキャナーは非接触測定技術を用いて、対象物の形状や寸法を正確に捉えます。

直接触るのが困難な場所や高所、危険な環境にある物体へ物理的なダメージを与えずに計測できます。

また、非接触測定は、文化財や精密機器など壊れやすい物体の計測に有効です。

そのため、従来の手法では不可能だった詳細な分析やデジタルアーカイブの作成にも活用できます。

広いエリアも迅速かつ精度高く計測する能力がある

レーザースキャナーは広範囲を短時間でスキャンして、高精度のデータを提供する方法です。

そのため、大規模な土地や建物、複雑な工業施設の測量において、従来の手法と比較して大幅な時間の節約と効率化を実現します。

また、高精度なデータで設計や分析のクオリティを上げられるため、大規模なプロジェクトの進捗管理や、既存の構造物の状態評価にも役立ちます。

建築・土木・製造など幅広い分野で使用できる

レーザースキャナーは汎用性の高さから、建築や土木、製造業など多岐にわたる分野で利用されています。活用内容は以下のとおりです。

種類活用内容
建築建物の設計、施工、維持管理
土木道路や橋梁の設計、施工、維持管理
製造製品の設計、製造プロセスの最適化、品質管理

考古学や地質学などの研究分野でも、地形や遺跡の3Dマッピングに使用されており、新たな発見や分析に貢献しています。

また、レーザースキャナーの導入により、作業効率が大幅に向上するため、より正確で詳細なデータにもとづいた意思決定ができます。

レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)には欠点もある

幅広い分野で活用されているレーザースキャナーですが、以下のような欠点も存在します。

  • 対象物の形状や環境によっては計測が難しい
  • 対象とあまりに近すぎるとうまく計測できない

レーザースキャナーがもつ欠点について詳しく解説します。

対象物の形状や環境によっては計測が難しい

レーザースキャナーは、対象物の形状や環境によっては計測が難しい場合もあります。

レーザーの反射や散乱によって計測精度へ影響を与える可能性もあるため、光を強く反射する物体や、吸収する黒い物体の測定には適していません。

他にも、複雑な形状や動く物体も正確な計測ができない場合もあります。

レーザースキャナーの対象範囲や物体を確認したうえで、導入を検討しましょう。

対象とあまりに近すぎるとうまく計測できない

レーザースキャナーは、適切な距離に存在する対象物向けの測定方法です。

対象物がスキャナーに近すぎる場合、レーザーの入射角が浅くなり、結果として得られる点群の密度が粗くなってしまいます。

とくに、狭い空間や障害物が近くにある環境での計測において、測定できないなどの問題に発展する可能性があります。

高精度の計測を実現したい場合、対象物との適切な距離を保ちましょう。

レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)の価格相場

レーザースキャナーの価格は、種類によって上下します。種類別の価格相場は、以下のとおりです。

種類価格相場
ハンディタイプ10~500万円
デスクトップタイプ10~300万円
業務用・工業用300~1,000万円以上

ハンディタイプのレーザースキャナーの価格は約10~500万円が相場で、性能や用途などで差が出る傾向にあります。

デスクトップタイプのレーザースキャナーは約10〜300万円で、比較的小さいもののスキャンに適しているスキャナーです。

業務用・工業用は約300~1,000万円以上と高額ですが、高性能で対象物を高い精度でスキャンできます。

価格帯によって精度や測定可能範囲が異なるため、使用目的に合わせて選びましょう。

レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)の活用事例

レーザースキャナーは建築・土木関連や製造業などで活用されています。事例をまとめると以下のとおりです。

  • 建築分野での3Dモデルの作成
  • 道路トンネルでの建築限界調査
  • 製造業における精密検査と品質測定

どのような活用事例があるか詳しく解説します。

建築分野での3Dモデルの作成

レーザースキャナーは、建築分野での3Dモデル作成において重要な役割を担っています。

たとえば、設計図面と実際の出来形との差異を把握すると、施工精度の向上や不具合の早期発見につながります。

また、建築物の3Dモデルを作成すると、建設(AEC)業界においてプロジェクトの可視化や計画、管理が容易となり、工数の削減も可能です。

FARO社の高度なレーザースキャナー「Focus Laser Scanner」は、建物や施設といった複雑な環境でも、正確な計測ができます。

参考:FARO Focus Laser Scanner

道路トンネルでの建築限界調査

レーザースキャナーは道路トンネルの「建築限界調査」にも有効に活用されています。

たとえば、夜間片側車線規制時に実施される現地計測にて、レーザースキャナーが導入されています。

実際、トンネル延長500メートル間を25カットのスキャニングで行った結果、夜間作業が1日で完了しました。

また、巨大タンク壁面を「遠距離3Dレーザー」により複数方向から計測できるため、トンネル内の正確な寸法や構造の把握に成功しました。

レーザースキャナーによる精密な測定は、安全性の向上やメンテナンス計画の策定に不可欠といえます。

参考:3D レーザスキャナの構造物調査への適用事例

製造業における精密検査と品質測定

製造業において、レーザースキャナーは精密検査や品質測定のために利用される機会が多いです。

たとえば、航空機用の固定具や取り付け具の製造に3D測定ツールを使用すると、複雑な鍛造部品の形状評価を推進できます。

また、製品の設計精度の向上や製造プロセスの最適化、最終製品の品質管理にも貢献しています。

レーザースキャナーを用いると、製品の寸法精度を確保しつつ、製造過程における誤差を最小限に抑えることが可能です。

参考:プロダクトデザインとエンジニアリング

レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)の選び方

レーザースキャナーの種類で用途や精度が異なります。商品を選択する際には以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 現場の測定範囲
  • 希望する測定精度

レーザースキャナーの正しい選び方について解説します。

現場の測定範囲

レーザースキャナーを選ぶ際には「測定範囲」を確認しましょう。測定範囲とは「スキャナーが捉えられる空間の大きさ」のことです。

たとえば、大規模な建築現場や広範囲の土地測量には、広い範囲をカバーできる長距離レーザースキャナーが適しています。

一方、小さな工業製品や精密部品の測定には、より狭い範囲を高精度でスキャンできるハンディタイプのスキャナーがおすすめです。

希望する測定精度

測定精度が高いかどうかは、レーザースキャナー選びにおいて重要な要素となります。

測定精度は、スキャンしたデータの寸法が実物にどれだけ近似しているかを表しており、高精度なスキャナーほど高価になる傾向があります。

たとえば、建築や土木の分野では、大きな構造物の測定に高い精度が求められないケースも多いです。一方で、製造業における小さな部品の測定には高精度な測定が求められます。

品質と価格のバランスを考慮して、用途に合わせた適切な精度の自社に最適なレーザースキャナーを選択しましょう。

ハンディタイプのレーザースキャナーについては、以下の記事を参考にしてください。

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レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)の導入・測量方法

レーザースキャナーを購入する際には、正しい測量方法を理解してから導入しましょう。

本記事では、導入する際に押さえておくべきポイントをまとめました。

  1. 用途を明確にする
  2. 必要な性能や機能が備わった機種を選定する
  3. 測定環境やソフトウェアの確認を行う
  4. 機体を設置して測定データを取得する
  5. データの処理と解析を行う

レーザースキャナーを導入する際の参考にしてください。

1. 用途を明確にする

まず、レーザースキャナーの導入にあたって、使用目的を明確にしましょう。建築や土木、製造業などの分野で応用可能ですが、業種によって最適な機種や測定方法が異なります。

たとえば、大規模な建築現場では広範囲をカバーできる機種、小規模な製品設計では高精度かつ細部まで捉えられる機種が最適です。

用途に合わせた機種選定が、効率的かつ正確な測量を実現するカギとなります。

2. 必要な性能や機能が備わった機種を選定する

レーザースキャナーを選定する際には、必要な性能や機能を考慮する必要があります。

プロジェクトの要件に合わせて、以下の項目をチェックしながら機種を選びましょう。

  • 解像度
  • 測定精度
  • 測定範囲
  • スキャン速度

他にも、測定環境に適した機種を選ぶことも大切です。

屋外での使用には、耐候性や広範囲をカバーできる機種が最適である一方、室内での使用には、コンパクトで操作が容易な機種に適しています。

3. 測定環境やソフトウェアの確認を行う

測定環境の確認と使用するソフトウェアの選定も重要です。測定環境によっては、特定のタイプのレーザースキャナーが適している場合もあります。

また、取得したデータを処理・分析するためのソフトウェアも重要です。

点群データ(ポイントクラウド、X・Y・Zの位置情報や色などの情報をもつ3次元データ)の編集やメッシュ生成、測定機能といったプロジェクトに必要な機能が備わっているかも確認しましょう。

4. 機体を設置して測定データを取得する

レーザースキャナーの設置は、正確な測量データを取得するためにも必要です。機器の設置位置や角度、測定範囲の設定を慎重に行う必要があります。

レーザースキャナーは対象物や環境に応じて、複数の位置からの測定も可能です。また、異なる角度からのスキャンを行うと、より正確なデータを取得できます。

5. データの処理と解析を行う

取得した測定データの処理と解析は、レーザースキャナーを使用するうえで重要な部分です。

データの統合やノイズの除去、3Dモデルの作成など、専門的なソフトウェアを使用して処理と解析を実行します。

最終的には測定データから有用な情報を抽出して、プロジェクトの目的に合わせた分析や評価を行います。

レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)導入時の注意点

レーザースキャナーを導入すると、建設や土木、製造業などのプロジェクトに必要なデータが取得できます。ただし、導入する際には以下の点に注意しましょう。

  • 障害物のない環境下で使用する
  • 目や肌にレーザー光を当てないように注意する
  • 測定精度やスピードを考慮する

導入する際の注意点について詳しく解説します。

障害物のない環境下で使用する

レーザースキャナーは周囲に障害物が存在すると、レーザー光が遮られたり反射したりして、正確な測定が難しくなります。

そのため、スキャン対象物の周囲3メートル以内に障害物がないか確認しなければいけません。

FARO社の「Focusシリーズ」は0.6メートルからの計測が可能です。使用するレーザースキャナーによってデータの取得度合いも異なるため、導入前に確認しておきましょう。

目や肌にレーザー光を当てないように注意する

レーザースキャナーを使用する際には、レーザー光が目や肌へ直接当たらないように注意しましょう。

レーザーのクラスによっては、肌に当たるとやけどを引き起こす可能性があります。

「FARO Focusシリーズ」はクラス1(直接当たっても問題のない製品)に分類されているため安全です。

レーザースキャナーの種類によって目や肌への影響も変化するため、導入の際には注意しましょう。

測定精度やスピードを考慮する

レーザースキャナーを選定する際には、測定精度やスキャン速度を考慮しましょう。精度が高い機種はより詳細なデータを提供できますが、コストが高くなる傾向にあります。

スキャンスピードが速い機種は、大規模な現場での作業効率を高めますが、精度が下がる場合も多いです。

そのため、プロジェクトの要件に合わせて適切なバランスの機種を選ぶことが、効果的な測量作業を実現するために重要です。

レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)に関するよくある質問

最後に、レーザースキャナーに関するよくある質問に回答します。

  • レーザースキャナーはレンタルできる?
  • レーザースキャナーを出している有名メーカーは?
  • レーザースキャナーとLiDARの違いは?

レーザースキャナーはレンタルできる?

レーザースキャナーは、メーカーや販売代理店でレンタル可能です。レンタル期間は1日〜1年と幅広く、ユーザーのニーズに合わせて選択できます。

レンタル費用は、スキャナーのモデルやレンタル期間で異なるため、プロジェクトの規模や予算に応じて適切な機種を選べます。

レーザースキャナーを出している有名メーカーは?

レーザースキャナーを製造している有名メーカーの例は、以下のとおりです。

  • 株式会社トプコン
  • ファロージャパン株式会社
  • 株式会社ニコン・トリンブル
  • ライカジオシステムズ株式会社FARO

上記のメーカーは高品質なレーザースキャナーを提供しています。

各メーカーで異なる特徴や製品ラインナップをもっているため、用途や予算に応じて選びましょう。

レーザースキャナーとLiDARの違いは?

レーザースキャナーとLiDARは基本的に同じ原理ですが、用途によって使い分けられています。

レーザースキャナーは、対象物にレーザー光を照射して反射した光を受信するまでの時間から距離を算出する計測装置です。

一方、LiDARはレーザースキャナーの一種で、主に自動運転システム向けに使用されます。レーザー光の位相変化を測定して、距離を算出する点が主な違いといえます。

レーザースキャナー(3Dレーザースキャナー)を導入してみよう

レーザースキャナーは、レーザー光を用いて物体の距離や形状を測定する装置で、建築や土木、製造業など多岐にわたる分野で利用されます。

使用目的やスキャナーの種類によって価格が異なるため、選定時には注意が必要です。

用途に合った最適なスキャナーを選ぶことで、効率的な業務につながり作業工数の削減にも期待できます。

レーザースキャナーの導入を検討している方は、本記事で紹介した選び方を参考に最適なスキャナーを探してください。

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