3Dレーザースキャナーは森林資源調査にも使用可能!使用事例や選び方を紹介

「3Dレーザースキャナーは森林資源調査に使える?」「使用した際の効果や事例はある?」などと気になっていませんか?

森林資源調査に3Dレーザースキャナーを使用すれば高精度なデータが取得でき、時間の効率化・コスト削減も可能です。また、アクセスが困難なエリアの調査も可能となるなど、持続的な森林管理につなげられます。

本記事では、3Dレーザースキャナーによる森林資源調査の効果や使用事例を紹介します。3Dレーザースキャナーの選び方や使用する際の注意点もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

目次

3Dレーザースキャナーとは?

3Dレーザースキャナーとは、物体の位置や形状を高精度で測定するための先進技術です。

スキャナーはレーザー光を物体に向けて発射し、光が物体に反射して戻ってくるまでの時間を計測してくれます。測った時間データをもとに光が1秒間に進む距離を割り出すことで、スキャナーと物体の間の正確な距離を算出するのです。

また、1点の距離データだけでなく多数の点のデータを高速で収集します。対象物体の3次元的な形状や表面構造を詳細に再現できるため、建築物の設計や施工では大変重宝されている優れものです。とくに森林資源調査の分野で価値を発揮しています。

3Dレーザースキャナーを使った森林資源調査でできること

3Dレーザースキャナーを使えば、森林資源調査において以下の項目が可能となります。

・高精度なデータ取得・計測
・時間の効率化・コスト削減を両立したスマート林業
・アクセスが困難なエリアの調査
・自然災害のリスク判定
・リアルタイムデータの取得
・持続的な森林管理

それぞれ詳しく解説します。

高精度なデータ取得・計測が可能

3Dレーザースキャナーは、森林内の立木や地形の高精度なデータを取得できます。スキャナーの技術により、木々の高さや直径、枝の分布などの詳細な情報を正確に計測することも可能です。

また、森林の健康状態や成長のモニタリングが容易になり、より効果的な森林管理が実現します。精度の高いデータは森林の生物多様性や環境保全の研究にも貢献し、持続可能な森林経営の基盤作りにも役立ちます。

時間の効率化・コスト削減でスマート林業を実現

3Dレーザースキャナーの使用は、従来の手作業に比べて時間を大幅に節約し、コスト削減にもつながります。とくに広範囲の森林を短時間で計測できるため、効率的な林業運営が可能となるでしょう。

時間の効率化とコスト削減はスマート林業の導入において重要な要素であり、生産性の向上に寄与します。また、人的リソースの削減により、他の重要な林業活動にリソースを再配分でき、全体的な林業の効率化を実現します。

アクセスが困難なエリアの調査が可能

3Dレーザースキャナーは地形が険しい、またはアクセスが困難な森林エリアでも使用できます。ドローンの遠隔操作技術と組み合わせると、これまで手が届かなかった場所のデータ収集も可能です。

とくに、遠隔地や人の立ち入りが困難な地域での森林調査に大きな影響を与え、これまでにない速さで高精度なデータを収集します。より広範囲の管理が実現できるため、森林調査以外にも建築物の設計や土木工事、製造業などからも注目が集まっています。

自然災害のリスク判定に活用

3Dレーザースキャナーによる詳細な森林データは、自然災害のリスク評価にも役立ちます。たとえば、山火事の危険性が高いエリアの特定や土砂崩れのリスクがある斜面の分析など、災害予防と対策の計画に重要な情報を提供します。

結果として、災害発生前の予防策を立てられるようになり、人々の生命と財産を守る上で重要な役割を果たすでしょう。

リアルタイムデータの取得

3Dレーザースキャナーを使えば、調査する森林が今どのような状況かリアルタイムでのデータ取得が可能です。森林の現状を即座に把握し、必要に応じて迅速な対応や管理がおこなえます。

たとえば、突発的な自然災害が発生した際に、迅速な状況把握と対応が可能になり、被害の最小化に貢献します。とくに環境変化が激しい地域では、リアルタイムデータが非常に重要です。

高精度なデータを迅速かつ正確に出すほど、自然災害による事故が回避しやすくなります。

持続的な森林管理が可能

3Dレーザースキャナーが出す高精度なデータを活用することで、持続的な森林管理が可能です。データが正確であれば、木材の適切な利用計画や生態系の保全に向けた管理戦略の策定にも役立ちます。

また、環境への影響を最小限に抑えながら効率的な森林資源の活用ができるでしょう。高精度のデータに基づいた計画は、最終的に地球温暖化や生物多様性の保全といった、現代の環境問題に対する有効的な対策となります。

3Dレーザースキャナーを森林資源調査で使用した事例

3Dレーザースキャナーはさまざまな企業や組織が導入しており、森林資源調査でも使用されています。ここでは、3Dレーザースキャナーを森林資源調査で使用した事例を紹介していきます。

地上レーザー計測と毎木調査による平均樹高の測定

林野庁・近畿中国森林管理局は、3Dレーザースキャナーを使って森林資源調査をおこないました。主には、森林内にある立木の樹高や胸高直径、位置や形状などのデータ取得のために活用しています。

調査地は岡山県新見市内の針葉樹人工林と広葉樹人工林で、レーザースキャナ機器と従来の毎木調査を比較しました。結果、作業効率に関しては地上レーザー計測が毎木調査に比べ、大幅に時間を短縮化しています。

さらに、レーザースキャナ機器には据置型と歩行型の2タイプがあり、歩行型は毎木調査の約1/32の時間で測定が可能です。一方、データ解析時間は据置型が毎木調査より短縮されましたが、歩行型はやや時間がかかる結果となりました。

参照:地上型三次元レーザースキャナシステムの活用

森林計測と小規模渓流調査

日本林業は長期的な不況を脱するため、林業改革を狙った「森林・林業再生プラン」を発表しています。継続的な森林経営を目指すため、森林資源のデータを確保できる3Dレーザースキャナーによる森林計測と、小規模渓流調査がおこなわれたのです。

調査では、地上に設置して使用するレーザースキャナー(TLS)と、車両やドローンなどに搭載して使用するスキャナー(BLS)を使用しています。どちらも正確性に長けており、BLSによる調査は数十分で広範囲のデータを確保でき、高い評価を得ているスキャナーです。

また、土石流災害は小規模な渓流に沿った地域での発生が多いため、簡便な調査方法が望まれます。その点、専門的な知識が必要なく広範囲の調査が可能な3Dレーザースキャナーは、渓流調査に最適であり、普及を目指したいと指摘していました。

参照:3Dレーザースキャナーによる森林計測と小規模渓流調査

森林資源調査で使用する3Dレーザースキャナーの選び方

森林資源調査で3Dレーザースキャナーを使用する際は、以下の方法で選びましょう。

・現場の測定範囲に合わせて選ぶ
・測定精度に合わせて選ぶ
・種類とコストで選ぶ

それぞれ詳しく解説します。

現場の測定範囲に合わせて選ぶ

森林資源調査では測定範囲が重要な要素となるため、測定する場所に合わせて選ぶことが大切です。

たとえば、一脚型レーザースキャナー「OWL」であれば林内に10m間隔の測定点を設け、各点を移動しながらレーザー計測をおこないます。一脚型は本体を一脚で固定して計測し、約45秒で1点の計測が可能です。

一方、据置型レーザースキャナー「FARO Focusシリーズ」は5〜20m間隔の測定点を設け、各点を移動しながら計測します。据置型は本体を三脚で固定し、1点当たりの計測時間は3〜5分です。

タイプによって計測時間が異なるため、調査地の広さや地形、必要な計測精度に応じて適切なタイプを選びましょう。

参照:地上型レーザースキャナーとUAVによる新しい森林調査

測定精度に合わせて選ぶ

測定精度に合わせて3Dレーザースキャナーを選ぶことは、森林資源調査において非常に重要です。たとえば、一脚型レーザースキャナー「OWL」はレーザーの到達距離が30mで、直径・樹高・材積などの情報を提供します。

一方、据置型レーザースキャナー「FARO Focusシリーズ」はレーザーの到達距離が最大350mで、より広範囲の計測が可能です。また、スキャンの「解像度」と「品質」を設定でき、屋外での使用に適しています。

タイプによって得られる結果が異なるため、精度の高いデータが必要な場合はより高い解像度と品質を提供する機器を選びましょう。

種類とコストで選ぶ

3Dレーザースキャナーを選ぶ際には、種類とコストにも注目して選びましょう。

3Dレーザースキャナーには、以下のようにいくつかの種類が存在しています。

種類特徴
地上型レーザースキャナー精度が高く、複雑な形状の対象物も測定できる
航空レーザースキャナー広範囲の対象物を短時間で測定できる
ハンディスキャナー手に持てるタイプで、細部まで精細なデータを取得できる
車載型レーザースキャナー広範囲の対象物を高速で測定できる

地上型レーザースキャナー(TLS)は効率的な森林調査を実施できるものの、数百万円以上と高価です。そのため、購入前には機器の特徴と予算を照らし合わせて、目的に応じて選びましょう。

3Dレーザースキャナーを森林資源調査で使用する際の注意点

3Dレーザースキャナーを森林資源調査で使用する際には、以下の点に注意しましょう。

・データ処理には適切な測定ソフトウェアが必要になる
・種類や測定方法によって精度や速度が異なる
・日差しや影の影響を受けやすい

それぞれ詳しく解説します。

データ処理には適切な測定ソフトウェアが必要になる

3Dレーザースキャナーを使用する際、データ処理には専用のソフトウェアが必要です。たとえば、一脚型レーザースキャナー「OWL」の場合、計測データを専用の森林計測ソフト『OWL Manager』で解析し、点群データを生成します。

一方、FARO社の据置型レーザースキャナーではソフトウェア『FARO® SCENE』で点群データを生成し、解析しなくてはいけません。適切なソフトウェアを使用しないと、精度の高いデータを取得しての解析ができなくなるため注意しましょう。

種類や測定方法によって精度や速度が異なる

3Dレーザースキャナーの種類や測定方法によって、精度や速度が異なります。

たとえば、一脚型レーザースキャナーは林内での計測に適しており、比較的高速でデータを取得できます。しかし、測定範囲が限られているため、広範囲の計測には不向きです。

一方、据置型レーザースキャナーは広範囲の計測に適していますが、計測時間が長くなります。また、背負子型レーザースキャナーは移動しながらの計測に適していますが、精度は他のタイプに比べて劣ります。精度や速度の差を比べつつ、予算や用途に合わせて最適なスキャナーを選びましょう。

日差しや影の影響を受けやすい

3Dレーザースキャナーは日差しや影の影響を受けやすいのもあるため、計測時の環境条件に注意が必要です。とくに、直射日光下での計測はレーザーの反射率が低下し、データの精度が低下する可能性もあります。

また、暗所や水などの影響でデータが欠落することも少なくありません。計測時は天候や時間帯を考慮し、最適な条件で計測をおこないましょう。

3Dレーザースキャナーを森林資源調査で活用しよう

3Dレーザースキャナーは森林資源調査において非常に有効的なツールです。3Dレーザースキャナーを使えば、森林の構造や樹木の特性を高精度で計測し、森林管理や環境保全に役立つデータを提供します。

さらに、導入にかかるコスト以上に高精度なデータの取得や調査の効率化など、プラスの費用対効果を見込めるものです。3Dレーザースキャナーの導入を検討している方は、本記事で紹介した選び方や注意点を参考に、最適なスキャナーを探してみてください。

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