「3Dレーザースキャナの基本原理とは?」「3Dレーザースキャナの種類や測定原理は?」などと気になっていませんか?
3Dレーザースキャナの基本原理は、レーザー光線を対象物に照射して反射光を検出し、対象物の表面形状を測定し、測定方法はそれぞれ異なります。
本記事では、3Dレーザースキャナの基本原理や種類について詳しく解説します。接触式・非接触式3Dレーザースキャナの測定原理や活用事例についてもまとめているため、ぜひ参考にしてください。
3Dレーザースキャナの基本原理
3Dレーザースキャナの基本原理は以下の通りです。
・物体を3Dデータへ変換するための装置である
・「接触式」と「非接触式」の2つに分類される
・非接触式は4つの測定方式を採用している
それぞれ詳しく解説します。
物体を3Dデータへ変換するための装置である
3Dレーザースキャナは、物理的な物体をデジタルの3Dデータに変換するための装置です。主に以下の分野で活用されています。
・建築
・土木
・製造
・医療
・文化財保存
物体を三次元の座標データに変換することで、物体の正確なデジタル複製が可能になりました。3Dレーザースキャナーを使用すれば高精度なデータが取得でき、時間の効率化・コスト削減も可能です。
目的に応じて「接触式」と「非接触式」を使い分ける
接触式3Dスキャナーは、物理的なプローブを対象物に触れさせて、接触点の座標を取得します。非常に高い精度が要求される際に適していますが、対象物に接触するため、繊細な物体や複雑な形状のスキャンには不向きです。
一方、非接触式3Dレーザースキャナはレーザーや光を使用して物体の表面をスキャンし、接触することなくデータを取得します。より迅速かつ柔軟なスキャンが可能ではあるものの、接触式に比べると精度は若干劣ることが多いです。
非接触式は4つの測定方式を採用している
非接触式は以下4つの測定方式を採用しています。
測定方式 | 詳細 |
タイム・オブ・フライト(TOF)方式 | 発射したレーザが反射して帰ってくる時間で対象物までの距離を計測する |
フェーズシフト方式 | 複数に変調させたレーザ光を発射し、反射して帰ってきた拡散反射成分の位相差(波の位相差)により対象物までの距離を計測する |
光投影法 | 不可視光(赤外線)を投影して計測する |
レーザー切断方式 | 可視光(ブルー・グリーンなど)を投影して計測する |
選ぶ方式によって精度や速度だけでなく、かかるコストも変化します。そのため、選ぶ際にはスキャンする対象物の特性や必要な精度、環境条件などを考慮して選ぶのが得策です。
接触式3Dスキャナーの測定原理
接触式3Dスキャナーは、3次元測定器とも呼ばれ、物理的なプローブやセンサーを使用し、対象物の表面に直接触れて測定を行うのが基本原理です。プローブは対象物の表面上を移動しながら、接触点が正確な3次元座標の取得を行います。
非常に高い精度での測定が可能であり、とくに小さな物体や複雑な形状、精密な工業製品の測定に適しています。高精度の測定と信頼性が接触式3Dスキャナーの主な利点です。
しかし、存在測定に時間がかかったり、対象物に物理的な影響を与えるデメリットもあります。やわらかい・壊れやすい物体には不向きなため、用途に合わせて利用するかを検討することが大切です。
非接触式3Dレーザースキャナの測定原理
非接触式3Dレーザースキャナーは物体に物理的に触れることなく、レーザーや光を用いて対象物の表面をスキャンします。主な測定方式をまとめると以下の通りです。
・タイム・オブ・フライト(TOF)方式
・フェーズシフト方式
・光投影法
・レーザー切断方式
それぞれ詳しく解説します。
タイム・オブ・フライト(TOF)方式
タイム・オブ・フライト(TOF)方式はレーザー光を対象物に照射し、反射光がセンサーに戻ってくるまでの時間を測って距離を測定するものです。TOF方式であれば、広範囲のスキャンや、複雑な形状の測定ができます。
大きな物体や遠距離の対象に適しており、建築や土木工事、大規模な工業施設の測定に使用されることが多いです。ただし、細部の精度は他の方式に比べて劣る場合があります。
フェーズシフト方式
フェーズシフト方式は変調されたレーザー光を使用し、反射光の位相変化を測定する方式です。レーザー光の位相を変調させた後、測定対象物に照射して反射光の位相を検出することで、対象物までの距離を測定します。
対象物の距離や形状を非常に高い精度で測定できるため、長距離の測定や複雑な形状の測定に最適です。そのため、航空測量や製造業、医療などの分野で広く用いられています。
光投影法
光投影法とは対象物に構造化光を投影し、反射光を測定することで対象物の形状や大きさを測定する方法です。特定のパターンの光を対象物に投影し、歪みを分析して物体の形状を取得します。
代表的な構造化光をあげると以下の通りです。
・スリット光:スリット状の光源から出射された光
・正弦波パターン光:正弦波のパターンを有する光
・ランダムパターン光:ランダムなパターンを有する光
複雑な形状や細かいディテールを持つ物体のスキャンに適しており、製造業や医療、エンターテインメントなどの分野で用いられています。ただし、照明条件によっては精度が低くなる恐れもあるため、選ぶ際には注意しましょう。
レーザー切断方式
レーザー切断方式ではスリットレーザー光を対象物に照射し、可視光を投影して計測する方式です。三角測量を用いて距離情報を取得し、物体の3Dデータを生成します。
高速で高精度かつ広い範囲の測定ができることから、建築・土木や製造業、医療などの分野で用いられています。とくに精密な測定が求められる場合や、反射性の高い材質のスキャンに最適です。
異なる原理を持つ3Dレーザースキャナの種類
3Dレーザースキャナーは、使用方法や設置形態によっていくつかのタイプに分類されます。種類別でまとめると以下の通りです。
・ハンドヘルド型スキャナー
・固定型スキャナー
・移動型スキャナー
・ドローン搭載型スキャナー
・車載型スキャナー
・CMMスキャナー
それぞれ詳しく解説します。
ハンドヘルド型スキャナー
ハンドヘルド型スキャナーは、手で持って操作するタイプの非接触型のスキャナーです。ハンドヘルド型の最大の利点は、携帯性と柔軟性にあります。
たとえば、スキャナーを対象物の周囲に自由に動かしながらの測定も可能です。柔軟に測定ができることから、工業製品の検査や文化財のデジタル化、医療分野での使用といった多岐にわたる分野に適しています。
また、固定型スキャナーではアクセスが難しい場所や角度からもスキャンを行えます。
固定型スキャナー
固定型スキャナーは、測定対象物の周りに固定して使用されるスキャナーです。接触型と非接触型の両方のタイプがあり、高い精度と再現性を持つことから工業生産ラインや研究施設での使用に最適です。
対象物を一定の位置に置けば、非常に正確なデータを取得できます。ただし、スキャン範囲が限定されるというデメリットもあるため、利用する際には注意しましょう。
移動型スキャナー
移動型スキャナーは測定対象物の周りを移動しながら、3Dデータを取得する接触型と非接触型の両方を兼ね備えたスキャナーです。移動型スキャナーには、以下の2つの種類があります。
・ハンドヘルド型:手で持ち運びながら行う測定方法
・車載型:車などの移動体に搭載して行う測定方法
ハンドヘルド型は小型で軽量なため、狭い場所や人の出入りが多い場所にピッタリです。一方で、車載型は広範囲を効率的に測定できるという利点があります。
主に建物の形状測定や製品の検査、橋梁や道路などの点検での利用が多いです。
ドローン搭載型スキャナー
ドローン搭載型スキャナーは、ドローンに搭載されたカメラやレーザースキャナーを使用して、3Dデータを取得する非接触型のスキャナーです。広範囲を迅速に測定できるだけでなく、対象物へのアクセスが難しい場所でも測定できます。
具体的な用途としては、地理的な調査や大規模な土木工事、災害現場の分析などに使用されることが多いです。アクセスが困難な地域や危険な場所のスキャンに非常に有効ではあるものの、ドローンの操縦技術が必要というデメリットもあります。
車載型スキャナー
車載型スキャナーは車両に搭載されたレーザースキャナを使用して、3Dデータを取得する非接触型のスキャナーです。測定対象物へのアクセスが難しい場所でも測定でき、測定対象物への負担が少ないというメリットがあります。
主に道路や橋梁の調査や都市計画、交通インフラの分析などに利用されることが多いです。車載型スキャナーは移動しながら広範囲のデータを迅速に収集するため、大規模な屋外環境の測定にも適しています。
CMMスキャナー
CMM(Coordinate Measuring Machine)スキャナーは、物体の3次元形状を測定するために使用される接触型のスキャナーです。非常に高い精度で物体の寸法を測定したいときに使用されます。
CMMスキャナーは主に製造業で品質管理や部品の検査に使用され、精密な測定が必要な場合に最適です。複雑な形状や小さな部品の測定に特化しており、高い精度と再現性を提供します。
3Dレーザースキャナの活用事例
3Dレーザースキャナーは高精度なデータ測定と柔軟性により、さまざまな分野で活用されています。活用事例をまとめると以下の通りです。
・3Dモデルの作成
・対象物の形状測量
・形状の検査
それぞれ事例を紹介します。
3Dモデルの作成
3Dレーザースキャナは、物理的な対象物をデジタル3Dモデルへ変換する際にも有効です。3Dレーザースキャナーの技術は、以下の分野において重要な役割を果たします。
・製品の量産化
・金型成形
・技術の蓄積
・新製品の開発
・既製品のリバースエンジニアリング
たとえば、自動車や航空機の部品を3Dスキャンし、データを使用してCADソフトウェアで設計を行うことも可能です。最終的には、3Dプリンターでプロトタイプの作成もできます。
結果として、製造業における新製品開発のスピードと精度を大幅に向上させ、コスト削減にも寄与します。
対象物の形状測量
建築や土木業界では、3Dレーザースキャナーを使用して建物や構造物の正確な測量を行います。たとえば、高層ビルの建設現場で建物の寸法を正確に測定し、設計図との差異を確認できます。
他にも、災害現場では崩壊した建物や地形の変化を迅速に把握し、救助作業や復旧計画の策定に役立てることが可能です。3Dレーザースキャナーは安全性を確保しつつ、効率的かつ正確なデータ収集を実現します。
形状の検査
製造業においては、3Dレーザースキャナーは製品の品質管理に不可欠なツールです。自動車や航空機の部品など、高精度が求められる製品の形状をスキャンし、設計図との適合性を検証します。
たとえば、3Dレーザースキャナーを使えば古い建物や彫刻の3Dスキャンを定期的に行い、時間の経過による劣化や損傷の監視ができます。文化財や歴史的建造物の形状変化を監視することで、貴重な資産の保全にも役立つでしょう。
他にも、建築や土木業界で扱う製品に不具合がないかの早期発見にも貢献できます。
3Dレーザースキャナーの選び方
3Dレーザースキャナーの種類によって測定できるデータは異なるため、用途に合わせて選ぶことが大切です。選び方をまとめると以下の通りです。
・種類とコスト
・現場の測定範囲
・希望する測定精度
それぞれ詳しく解説します。
種類とコスト
3Dレーザースキャナーは、種類とかかるコストに気をつけて選びましょう。接触式や非接触式など、3Dスキャナーにはさまざまな種類があり、それぞれかかるコストが異なります。
たとえば、FARO社の「Focus Premium」の場合、以下のように種類別で価格が異なります。
・FocusPremiumレンジエクステンション350m:1000万円~
・FocusPremiumレンジエクステンション150m:850万円~
・FocusPremiumレンジエクステンションなし(70m):700万円~
・FocusCore(70m):500万円~
超高彩色の解像度にてデータを測定する「Focus Premium」ですが、種類ごとに測定範囲が変化します。他のメーカーでは種類が変わるだけで精度や測定速度が変化する場合もあるため、予算に合わせて最適なタイプを選ぶことが重要です。
現場の測定範囲
3Dレーザースキャナーを選ぶ際には、現場の測定範囲も考慮して選びましょう。測定範囲は対象物のサイズや形状によって異なります。
調査範囲が広い現場を測定する場合は、長距離レーザースキャナーやX線CTスキャナーが最適です。必要に応じて、特定の用途向けの機種を検討する必要があります。
対象物の大きさや細かい形状を考慮し、適切な測定範囲を持つスキャナーを選択することが重要です。
希望する測定精度
どれだけの測定精度を求めるのかも、3Dレーザースキャナーを選ぶ際には重要なポイントです。
レーザースキャナーの性能は測定精度に大きく影響します。高精度なデータを得るためには精度の高いスキャナーが必要ではあるものの、時間とコストがかかる点がデメリットです。
一方で、速度を優先する場合は精度が低下する可能性もあります。そのため、何を目的として3Dレーザースキャナーを使うのか、精度と速度のバランスを考慮して選択しましょう。
3Dレーザースキャナの原理を理解し最適な製品を導入しよう
3Dレーザースキャナは、物理的な物体をデジタルの3Dデータに変換するための装置です。3Dレーザースキャナにはさまざまな種類があり、選ぶ際には種類とコスト、測定範囲や希望する測定精度を考慮することが重要です。
用途に合った最適なスキャナーを選ぶことで、効率的かつ効果的な3Dスキャン作業を実現できます。3Dレーザースキャナの導入を検討している方は、本記事で紹介した種類ごとの特徴や選び方を参考に、最適なスキャナーを探してみてください。